あ・うんの記事を書かせてもらいました
金剛禅総本山少林寺広報誌
あ・うん voL.97 2024霜月・師走
道院長 元気の素
◆設立時の苦労
1996年、能登七尾支部道場の正認証を頂いたのは30歳の時です。金沢卯辰山道院からの独立でした。当時の安田嘉昌道院長(現:加賀かけはし道院長)と当時の梅岡和也道場長(元:金沢南道院長)、当時の加藤善成助教(現:金沢卯辰山道院)の後押しがあっての挑戦でした。まだまだ指導者としての自信も無く、週末毎に七尾市から80km離れた金沢卯辰山道院に通い、修練に参加させてもらっていました。
2007年に能登七尾道院へ移行し、2009年に現在の専有道場が完成し道場開きを行いました。運良く自宅近くに土地があり、建築関係の仕事をしている親戚に頼んで格安で建ててもらいました。基礎からしっかり工事してもらったおかげで、能登半島地震でもビクともしなかったようです。
◆指導の方針
子供たちには、「算数が得意」、「歌が上手い」、「足が速い」など、何でも良いので自信を持ってもらいたいと考えています。できれば少林寺拳法を通して自信を持ってもらいたい。「独りで帯が結べた」など簡単なことでも構いません。この積み重ねが自己肯定感に繋がり、頼りにできる自分の基礎が作られると考えます。自分を信じられる心、自信がなければ、他の人に優しくすることもできないと思います。その上で、自立と自律ができて、仲間と協調できる子を育てることが目標です。「強くて優しい子に育つ!」を目指しています。
一般部には、「本当の強さ」「究極の強さ」を身につけよう!と話しています。今、多くの人たちが自分を取り巻く環境に不安を抱いています。激しく変化する時代に、しなやかに対応できる自己を作り上げていくこと、「しなやかな”ココロ”と”カラダ”づくり!」これが究極の強さだと考えます。
◆修練時の声掛け
連続複数法形修練を取り入れ、左右とも修練するようにしています。連続した動きに戸惑ったり、左側の動きがぎこちなかったり、「先生が一番、下手だな!」「ううん、なかなか上手くいかないな〜」など、自分が失敗したこと、上手くいかなかったことを素直に口に出しています。そして、道院内では、「失敗しても良いよ!」と声を掛けています。
拳士たちには、失敗を恐れずにチャレンジして欲しいと思います。その中から小さな成功体験が得られれば最高です。できなくてもチャレンジした経験は得られます。悔しさや至らなさへの反省などです。失敗してもチャレンジしてみることは、自分の可能性を信じていることになります。やれば出来るかもしれない。それがダーマを信じるということではないでしょうか?
◆全国の拳士へのお礼
2024年1月1日、能登半島地震が起きました。石川県七尾市も震度6強と激しく揺れ、自宅も玄関先が歪んで今でもしっかりとは閉じなくなりました。瓦も少し歪んだようで修理が必要です。断水も2月半ばまで続きました。ここで少林寺拳法の団結力と行動力に驚かされましたが、すぐに全国から励ましの電話やメールが届き、支援物資までも送ってもらったり、届けてくれたりしました。ありがたい限りです。頂いた支援物資は、困っている拳士や近所の方などにお配りしました。
また、能登七尾道院の建物は無傷だったので、「道院開けないのですか?」との拳士からの要望もあり、2月から1ヶ月遅れで新春法会を行い、修練を再開することができました。それまではどこか緊張した日々だったのですが、修練再開が日常を取り戻すきっかけになったような気がします。
今まで当たり前に行えていたことが出来なくなるのは、本当に辛くなります。「脚下照顧」足下を照らして反省するという意味もありますが、もう一段深く考えると「当たり前と考えていることは、本当に当たり前なのか?」「本当は、とても恵まれているのではないか?」日々の当たり前が失われて初めて気付かされることがあります。
最後に全国の拳士の方々から少林寺拳法グループを通じて義援金を頂きました。一部を能登地区の全拳士に配布し、残りは七尾市をはじめ志賀町、穴水町、能登町、輪島市、珠洲市に寄付されました。ありがとうございます。まだまだ復興途中で、全国からボランティア活動として来県される拳士の方もいると思います。奥能登に出向く際は、七尾市を拠点として頂くと良いかもしれません。その際はお声を掛けてください。